『ボローニャ・セッテ』※1(2007年8月12日)のボローニャ司教区の記事  東京セイントアカデミー合唱団


チサコ、日本の宗教音楽を語る [直訳は"日本の宗教音楽に対するチサコの声"]

ソプラノのチサコ・ミヤシタは、今週、「アペニン地方の声とオルガン」音楽祭の一環として開催される二つのコンサートに出演する。チサコは東京に生まれ、1997年からボローニャで学び、イタリアでも日本でも数多くの宗教音楽のコンサートで歌ってきた。今回、ピエーヴェ・ディ・ロッフェノの演奏会ではソリストとして歌い、カプニャーノでは父が指揮する東京セイント・アカデミー合唱団と共演することになる。
――二つのコンサートの曲はどのようにして選ばれたのですか?
ピエーヴェ・ディ・ロッフェノのコンサートは、私が依頼を受けたとき、すでに「アッシジの聖フランチェスコ」というテーマが決まっていました。俳優のマッテオ・ベッリの朗読と交互に、ハープの伴奏による歌を歌います。13世紀の賛歌と19世紀のフランス歌曲です。フランス歌曲の歌詞は厳密な意味で「宗教的」な性格のものではありませんが、聖フランチェスコと同じく、自然の美を歌っています。一方、合唱のコンサートはブルックナーのモテットで始まります。神秘的な雰囲気をもったこれらのアカペラの小品は、この合唱団のレパートリーの中でも最良のものに属します。ブルックナーは、続く日本の伝統的な歌とともに、この合唱団の「名刺」のような役割をもつでしょう。「スターバト・マーテル」が選ばれているのは、私自身にとって特に意味深いことです。というのは、作曲者は私のソルフェージュの先生だった方で、このご縁のおかげで私がこの音楽祭に参加する幸運を恵まれたからです。最後はグノーのミサ曲ですが、これは音楽祭のタイトル、「声とオルガン」を意識して選ばれました。この作品のオルガン・パートの美しさは、本当に素晴らしいものです。
――この合唱団は、西洋の古典から日本のものに至るさまざまな宗教曲を演奏しています。日本文化のなかで、それらは両方とも聴かれているのでしょうか?
日本ではヨーロッパの古典音楽はたいへん好まれており、教会に行かない人々や他の宗教の人々もヨーロッパ音楽が好きです。ヨーロッパ音楽はその美しさにおいて高く評価されていて、宗教音楽の場合、それは神への愛や敬意を呼び起こします。それに対して、日本の宗教音楽は、教会に通う人々のみが評価しているというのが一般的な状況です。
――日本のカトリック教会における典礼音楽の特徴とはどんなものですか?
1960年代に、ラテン語に代わって日本語の典礼文が使われるようになり、作曲家のタカダ[=高田三郎]が日本語による公式の典礼音楽を作りました。彼の音楽のスタイルは非常にシンプルなもので、メロディー・ラインは日本語テキストの語りの自然な流れに従っています。グレゴリオ聖歌にちょっと似ています。また、日本のカトリック教会には多くの聖歌があり、オリジナル曲、「フォーク・ミュージック」的なもの、そして、ヨーロッパ音楽を借用して翻訳の歌詞を付けたものなどさまざまです。最近、日本語テキストが手直しされ、さらに現代的な典礼音楽が新たに生まれています。         (聞き手:キアーラ・ウングエンドリ)

「アペニン地方の声とオルガン」、二つの演奏会予定

音楽祭「アペニン地方の声とオルガン 2007年」は、今週二つの演奏会を予定している。一つは、8月14日(火)の午後9時からピエーヴェ・ディ・ロッフェノのサン・ピエトロ教会で開催される「朗読およびソプラノとハープのコンサート」である。朗読(ヴィクトル・ユゴー、アンリ・バタイユ、ポール・ブールジェ、ジャン・ラオールその他の詩※2)と交互に、「コルトーナの賛歌91」※3(13世紀)と近代の作曲家の作品――ドビュッシー(1862〜1918)、ラヴェル(1875〜1937)、デュパルク(1848〜1933)※4、アーン(1875〜1947)、トゥールニエ(1879〜1951)――が歌われる。演奏はソプラノの宮下千佐子とハープのエマヌエラ・デリ・エスポスティ。二つ目のコンサートは、ポレッタ・テルメ市とカプニャーノ教区の共同主催で、16日(木)の同じく午後9時から、カプニャーノ(ポレッタ)のサン・ミケーレ・アルカンジェロ[=大天使聖ミカエル]教会で行われる。演目は、アントン・ブルックナー(1824〜96)、ルイージ・マテジッチ(1937生)、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜91)、シャルル・グノー(1818〜93)の作品と日本の伝統的な歌で、演奏は、宮下正指揮の東京セイント・アカデミー合唱団、ソプラノの宮下千佐子、オルガンの原田靖子による。東京セイント・アカデミー合唱団は主に宗教音楽を演奏しており、そのレパートリーはバロック時代から現代に至る。すでに2回のヨーロッパ演奏旅行を経験済みで、1度目の1992年にはオーストリア、2度目の1996年にはイタリアとハンガリーで演奏した。

※1 『ボローニャ・セッテ[=セヴン]』はカトリック系の日刊紙『アッヴェニーレ(未来)』の日曜版らしい。
※2 これらはフランス歌曲の歌詞。朗読は14世紀の聖フランチェスコ伝『小さき花(I Fioretti di San Francesco)』とダンテの『神曲』から。コンサートのタイトル「兄弟なる太陽、姉妹なる月」はフランチェスコの詩「太陽の歌」による。
※3 作者不詳の「コルトーナの賛歌91」は、写本がイタリアのコルトーナの図書館にある。91は写本の所蔵番号。
※4 デュパルクと後出のブルックナーについては、原文の生没年の誤植を訂正した。

                                                             (訳者:高橋裕子) 


新聞記事へリンク ⇒ http://www.bologna.chiesacattolica.it/bo7/2007/2007_08_12.pdf (5ページに記事)


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